--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「俺は自らの意志で大悪人になるのだ……!!」 黒薔薇のサブロ 原作 小池倫太郎/漫画 内藤隆

2011年05月16日 22:24

黒薔薇のサブロ

生まれながらに右目は潰れ、左腕は枯れ木のような醜さ。土台これでは二枚目は張れぬ。
ならばいっそと自ら歩む大悪党の道。地獄の門をいざ叩かん。

宇宙戦争を舞台とした戦国ダークファンタジー「黒薔薇のサブロ」全1巻の感想です。

本作と世界観を共有する作品「百目の騎士」の感想はこちらから。

本作はシェイクスピア作の史劇「リチャード三世」を下敷きとした物語です。
ですがそれよりも重要なのは、本作が「百目の騎士」と世界観を同じくしている作品である、ということです。
「百目の騎士」は残念ながら掲載誌の休刊により未完のまま、現在2巻までで中断していますが、思わぬ形で関連作にお目にかかることが出来ました。
時系列的には「百目の騎士」より800年ほど過去の物語であり、「百目の騎士」で語られていた百目将軍も登場します。


以下、感想です。
生まれながら身体に障害を持つ男、黒星公サブロが主人公となる悲劇。

父と末弟を殺された大義により王を誅殺したタロ、ジロ、サブロの三兄弟。かくして紅薔薇派と白薔薇派に分かれて戦った薔薇戦争は終結を向かえる。

天下泰平を迎えるものの、姿は醜く戦以外に才のないサブロは面白くない。
ならば、と己が王となるために兄弟親族を殺しに殺して大悪党の道を行こうと目論むサブロ。

「どうせ二枚目は無理だとなれば…
 いっそ悪役に徹して この世の一切を憎んでやろうじゃァないか!!!
 筋書きはとっくにできている…
 剣呑な筋書きがな!」




舞台劇を下敷きとしているためか、芝居のような大仰な仕草やもってまわったセリフ使いが特徴的な作品です。

観客はホムンクルスのドレイが一人。
憎き前王を殺した際にそのお后から奪い、サブロが「トコ」と名付けました。口のきけないトコはいつもサブロの傍に控え、この悲劇の一部始終を観ていました。

奇形の身体を持って生まれたせいで、母からも疎まれ、兄弟からも馬鹿にされ、誰からも陰口を叩かれて育ったサブロ。自ら望んで悪の道を進む彼の厭らしい笑顔や小悪党めいた言動はそのような育ちが影響しているのでしょう。
しかしどうにも憎めないのは、滲み出る小者臭さのためでしょう。気が短く口を開けば罵詈雑言、芝居は大袈裟でへたくそ、その上人望も無いときている。更に史実の通りであれば最後は戦死と決まっています。
妬むほどの栄光は持たず、いっそ哀れな道化師です。

読み進めてみれば、非道を尽くした末路は哀れ、恐怖と絶望の一人芝居。
この男を憎めという方が難しい。

もっとも、登場人物のほとんどが打算的で腹に一物抱えた悪党ばかりですから、サブロ一人に集中して悪感情を持つことができない、というのも理由の一つなのでしょう。

例外なのは兄であるタロ王の長女・イロハ姫。観客であるトコを除けばほぼ唯一の純真無垢な人物です。そのあまりの無防備さにはサブロですらも好意を抱きました。
イロハ姫はこの物語の陰の主役です。叔父と姪の関係でありながら口を利いたこともなかった二人ですが、イロハ姫はサブロと話したことで王族としての自覚が目覚め、サブロと同じく悪の道を歩む決意を固めます。しかしながら叔父のサブロとは異なり、あくまでも天下泰平のために。

(王道は茨の道
 鉄の心を持つのだ)


信念を持って王座に就いたイロハは、名君として『鉄血女王』と讃えられます。

読み終えてみれば、この物語はイロハ姫のためにあったように思われます。希代の悪党王・サブロの生き様を教訓に、完全無欠の女王を生み出すための。この辺りはシェークスピアの劇とは異なるようですね(ちゃんとは知らないですけれど)。


間接的ながら「百目の騎士」に繋がる本作。読了感は全く異なるものの、面白い作品でした。
しかしやはり気になるのは「百目の騎士」本編の続きです。そちらはいつになったら再開できるのでしょうね。一刻も早い復活を願っております。




コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://questmys.blog64.fc2.com/tb.php/443-582d971f
    この記事へのトラックバック



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。