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「強くて優しい人。君はぼくの恩人」 3月のライオン 5 羽海野チカ

2010年11月28日 22:13

3月のライオン_5

島田八段の敗戦報告。
新しい年度の始まり、そして進級。
始まる新人戦。
そして――

零が人のために真剣に考え始める「3月のライオン」5巻の感想です。

1~2巻の感想はこちらから。
3~4巻の感想はこちらから。

表紙は幼い頃の零。ナワシログミの葉の陰に座り将棋の本を読んでいた彼が顔を上げた理由は、巻末辺りの話を読めば分かります。
そして裏表紙とピンナップに描かれているのは、春の日、桜の下で日を浴びる気持ちの良さそうなひなた。5巻を読み終えた後この笑顔を見ると切なくなります。

心をグッと鷲掴み。
零の中で誰かのために戦う覚悟が芽生えた5巻です。

以下、感想です。
獅子王戦にストレート負けした島田八段。零と一緒に故郷を訪れ敗戦報告。
心中気を重くしていた島田八段ですが、故郷での叱責とふれあいで大分気も落ち着いたご様子。
島田八段は故郷の人達に支えられ、そして島田八段自身も故郷のために戦っていました。その事実も零にとって島田八段から学んだことの一つだと思います。


話は変わり、新年度の進級&クラス替え。高校デビューならぬ進級デビューを狙いシミュレートするものの、性根にしがみつくネガティブ思考のおかげで見事に心が折れました。
と、そこに現れたのが旧担任の林田先生。

この先生、本当にいい人。
高校生活に馴染めない零に「将棋部設立」を促し、部員不足の科学部と併合した「将科部」を発足させます。
「プロからただで将棋を教えてもらえる」という打算的な名目も掲げていますが、そんなものはオマケでしょう。
人に馴染めない零のことをよく見ていて、献身的に面倒を見てくれる。教師の鏡のような人物です。どこかの誰かさんに見習わせてやりたい。

将科部では零も楽しそうに指導をしています。が、不意に訪ねられた質問に彼は答えることが出来ませんでした。

「お前…
 将棋やってて楽しい?」


両親が事故でなくなる前は純粋に楽しんでいたのだと思います。しかし、幸田家に引き取られてからは養父に気に入られるために必死に指し続け、孤独を忘れるために無心で将棋に臨んだ過去があります。

 ずっと 足のつかない夜の海に 浮かんでいるような日々だった
 この小さな盤しか すがれるものは もはや無かった


将棋にまつわるエピソードを思い返す度、零は辛そうにかつ狂気的にモノローグで語ります。
そうした日々を重ねる内、将棋の楽しさをどこかに置き忘れてしまったのかも知れません。
それでも、将棋の負けた悔しさと、駒を打つ楽しさが彼を支え続けてきたのだと、思いたいところです。

何せ彼には少々図太いところもありますから。

「安心しろ 桐山
 お前がどんな驕り昂ぶった偽りの草食棋士だとしても
 そんな事くらいでオレはお前を見捨てたりしないっっ」


とは、新人戦が始まっても余裕綽々の零へ向けられた心友(?)二階堂の言葉。
いかに自分が自信満々で驕っていたかを自覚させられた零は顔を真っ赤にしながら走り去り、そんな様子を見守っていた周囲の老成棋士達は憤慨しながらも「かわいいやつめ」と愛でるのです。

高校生とはいってもやはり中学生でプロになった将棋の神童。獅子王戦トーナメントの時もそうでしたが、まずは上から目線であり負ける事など微塵も考えていません。大人しそうに見えて闘争心ムンムン、野心満々。持てる者の特権を余すところなく使っているのです。
そのことに初めて気付かされた零。この先対戦に臨む彼の姿勢がどのように変化していくのか、それともしないのか。楽しみですね。


そうした面白おかしいエピソードを交えつつ、迎えた5巻の巻末からのエピソードは予想外の角度から打ち込まれてきました。
零がクラスで浮いていたり、お一人様だったり、地味に陰口叩かれている事はこれまでも描かれていましたが、まさか……。

明るく朗らか、天真爛漫がウリの川本家次女・ひなたがいじめを受けて涙を流すとは……。

いじめられていた子を助け、その子が転校していなくなり、次の標的に選ばれたひなた。
それでも大泣きしながら「正しい事をしたから後悔はしない」と決意を述べるひなたの心の強さには胸打たれました。
そして、零は孤独だった自分の子供時代を思い出し、ひなたの言葉に救われた思いをするのです。

「ありがとう
 君はぼくの
 恩人だ
 約束する
 僕がついてる」
「……
 れいちゃん?」
「一生かかってでも
 僕は
 君に
 恩を返すよ」


片膝ついてひなたの手を取り、その顔をまっすぐ見据えて誓う零。
まるで愛の告白です。

連載中の本誌ではもう一段階ぶっ飛んだ事になっていますが、果たして零はどこへ行ってしまうのか。
先の気になる6巻の発売が待ち遠しいです。




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