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「俺たちは走り回るハムスター」 学校の階段 1~5 櫂末高彰

2010年09月21日 01:53

学校の階段_s1

再三繰り返しますが廊下を走ってはいけません。
そのことを理解した上で本書をお読みください。

学生時代の青春を突っ走る「学校の階段」原作小説1~5巻の感想です。

漫画版1巻の感想はこちらから。

全10巻中なぜ5巻までの感想なのかというと、ストーリーが大きく3つに分けられるためです。

・1~ 5巻 階段部メンバー編
 階段部への導入から、各人の階段部入部への背景を書く
・6~ 8巻 VS波佐間勝一編
 山上桔梗院学園高校との交流を経て、天馬グループの確執とそれに抗う少年の姿を書く
・9~10巻 VS刈谷健吾編
 3年生の卒業を控える中、覚醒した神庭幸宏が同類である刈谷健吾と最後の対決を行う

作者自身により明確に区切られているわけではありませんが、読んだ感じでは上記のようになります。
というわけで3回に渡って原作小説の感想を書いていくことにします。

以下、感想です。
ストーリーのあらすじは漫画版の感想で書いたので割愛します。

主要メンバーである階段部の面々は以下の六人。

・神庭幸宏(1巻のメインキャラ)
 主人公。階段部娯楽係。異名はまだない。
 最初は無理矢理入部させられたものの、次第に階段部に染まっていく。天然であり、天性の勘でコースの状況を読む。割と大人しい少年として書かれているが、時折暴走する上内面は案外暴力的で破滅型。
 凄く主人公らしい主人公。

・九重ゆうこ(2巻のメインキャラ)
 階段部部長。「静かなる弾丸」の異名を持つ(異名を決めてるのは九重だけど)。
 陸上のハードル競技で伸び悩む中、幼なじみの健吾をきっかけに階段部を設立。幼い容姿に相応しい性格で、勝手気まま。だが後輩には慕われている。ものを考えていないようで、その実本当に何も考えていないので始末に負えない。

・刈谷健吾
 階段部副部長。「必殺Vターン」の異名を持ち、ショットレース最強。
 階段レースの創始者であり、中学時代から一人で衝動的に行っていた。元執行部部員。幼なじみの九重とは家が隣同士で、お互いの部屋の窓に梯子をかけて行き来できる。実はいい体しててそこそこ自信もある。あと凄いモテる。
 階段部が執行部に目を付けられているのは彼のせい。

・天ヶ崎泉(3巻のメインキャラ)
 階段部会計係。「黒翼の天使」の異名を持ち、学内では『雷(いかづち)の女神様』とも呼ばれている。
 天馬グループなる大企業のお嬢様。中学時代はテニスをしていたが贔屓されていると感じ辞める。お嬢様だと想って舐めてると意外な攻撃を受ける。また、同性のストーカーがおり、半ば本人公認で映像を撮られている。

・三枝宗司(4巻のメインキャラ)
 階段部記録係。「天才ラインメーカー」の異名を持つ。
 元電脳研究会員であり、レースで不正が出来ないよう発信器で監視したり、校内に設置したカメラで部員の走りを記録したりしている。階段の採寸から部員の走り方まで詳細に記すデータマニア。子供の頃から日記を付けており、その内容はおそらく将来黒歴史として悶えるであろうこと必至。階段部に入部して以降、人生が充実している様子。あと付き合っている彼女が女神。

・井筒研(5巻のメインキャラ)
 階段部マッサージ係(九重専用)。途中から「月光ダンシングステップ」の異名を得る。
 九重ラブの九重教信者。最初は幸宏に激しく反発していたものの、気付けば他に友達がいないという悲しい男。告白相手を間違えてクラスの女子一同から総スカンを食らい、かつそれがきっかけで怖い人に絡まれたりもしたがおかげでかわいい彼女をゲット(?)した。ちなみにその彼女が泉の公式ストーカーの一人。


まず始めに読んで想ったのは、廊下は走っちゃいかんだろう、という当たり前のことでした。
当然それは作中で何度も繰り返されており、1巻時点では学園内の先生・生徒の間で迷惑がられ、時に暴力を受けることもありました。そして悪いことをしている自覚がある階段部のメンバーは、それでも「すみません」と頭を下げて謝罪し、けれど走ることを辞めません。

そうして次に思うことは、マイノリティーに属し且つ差別を受ける理由のある階段部への待遇でした。
全く関係のない作品ですが、田中ロミオ先生の「AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜」が頭に浮かんだのです。その作品では、いきすぎたオタク集団に無理矢理参加させられた主人公が一般生徒の友達を失いクラスの半数に冷たい態度を取られる描写があります。

「学校の階段」作中では部活動メインなのでクラス内の様子が事細かに書かれることはないのですが、主人公がいじめを受ける描写はありません。クラスの面々は「変な部に巻き込まれて大変」という同情的な目線であり、高校入学を機に出来た友達は相変わらず良い友達として接しています。
そして、1巻にて階段部のレースが校内放送されると、今まで階段部を非難していた一部も一転して好意的に接するようになったのです。

作者も作品も異なるながら、この違いがどこから来るのかを考えてみると、主観の違いと日本人の性格(多数派に従う、お祭り好き)なのかなぁ、と思うのです。
「AURA」で主人公が属するのはコスプレ登校したり中二病敵発言の多い、痛いオタク達でした。
一方で階段部の面々は迷惑がられてはいるものの、個々人(除く、一年生)は学校内で人気者であり、注目を浴びる存在なのです。そんな彼らの白熱するレースを視せられ、生徒達は一気に熱を帯びるのでした。
そこからは一転、階段部がきちんとルールを持って行動している、ある程度のマナーを守っていると多数から好意的に受け入れられ、中にはレース中に声援を送る者も出てきます。
おかげで作風は爽やかな青春物語を展開でき、読者も階段レースに集中できる土台が出来上がりました。


と、長々書きましたが、言いたいことは「主人公達良かったね」ということと「現実では真似すんなよ」ということの2つです。
危険ですし、フィクションである本作のように好意的には運びませんから。


先にも述べましたが1~5巻は階段部の各メンバーに主眼を置いた内容となっています。
各巻とも青春しており一気に読み進められる面白さがあるのですが、その中でも特に好きなのは4巻の天才ラインメーカー・三枝メインの回です。

4巻は子供の頃から記された三枝の日記を交えつつストーリーが展開していきます。
幼少期から現在に至るまでが読めるため、作中のキャラで三枝の性格がもっとも深く掘り下げられることとなります。
そうして親を疑うこともなかった幼児期、反抗心が芽生えた幼少期、世の中を斜に構えて見ていた少年時代、階段部に入ってからの心情の変化が読み手に公開され、全登場人物の中で最も感情移入できる人物になりました。

4巻に至るまで、後輩には良き先輩として接し、先輩へは尊敬の念を持って従っていた三枝ですが、部員に黙って暗躍する様も伏線として書かれています。そうして綿密にデータを取り、計画し、100%の自信を持って階段部に造反します。
その心情もまた、日記という形で読者の目に触れます。

そうして読み進める内に思うのは、「そうだったのか」という驚きではなく、「あぁ、やっぱりな」という納得でした。

三枝の気持ちは隠すこともなく日記として赤裸々に語られているのです。読み進める内に読者は三枝に感情移入し、共感し、その思いをなぞるようにページを捲ります。最早真相を語られるまでもなく結果は見え、頭の中を目で追うように物語が進みます。
そして思ったままの結末を迎え、満足して本を閉じます。

結末の分からない、先の読めないストーリーの多くは傑作と呼ばれますが、これも一つの名作です。
そして、繰り返し読んでも劣化しない面白さを持っています。


1~3巻にも不満はありませんが、4巻を読めば本作にのめり込むこと間違い無しです。
漫画版を読んで気に入った方、原作小説をこれから読む方は、少なくとも4巻までは目を通して頂きたいです。

正直4巻読了時点で「ここがピークかなぁ」と思っていたのですが、どっこい、主人公・神庭幸宏にライバルが現れ、物語は再び盛り上がりを見せます。

5巻にて姿を見せたライバルの名は波佐間勝一。
そして彼の登場により本作に新しい風が吹きます。

「馬淵の宿命――いや、これは君に言うことじゃないな」
 ぽつりと洩らし、口元の笑みを消す。
「今度は、きっちり決着をつけよう」


そして物語は6~8巻のVS波佐間勝一編へと続きます。







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