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「そんな真実は知りたくなかった」 [映]アムリタ 野崎まど

2010年07月27日 21:00

〈映〉アムリタ

感動する映画は人の生き方を変える。それは名作と呼ばれる。
だが強制的に人の生き方を変えてしまうものは名作ではない。毒薬だ。
野崎まど先生のデビュー作「[映]アムリタ」の感想です。

先に2作目の「舞面真面とお面の女」を読了済みであったこともあり、期待して読み始めた作品でした。「舞面真面とお面の女」の感想を書かれているサイトでは「面白かったけど、「[映]アムリタ」の方がより面白かった」との意見が多く、弥が上にも期待は高まるというものです。

ただ、前情報を集めすぎたせいで先入観を持って読み進めてしまったことが残念でした。
と、言うわけで、ここから先の感想は本人の責任の下読み進めてください。
未読の方に関しましては読了後に感想を読まれることをお勧めします。
感想を読んでから買いたい、と言う方は先に買って読んじゃった方がいいです。作品の面白さは保証します。

以下、感想です。
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ネタバレにつきちょっと待ちました。
ここから先は読み手が「ネタバレOK」を了承したものとして書きます。

まず、よそ様の感想サイトで「西尾維新作品に似ている」と書かれているのをよく見かけました。
そして実際に読んでみて、会話のノリ(ボケ&ツッコミ)の雰囲気が確かによく似ている、地の文の言い回し(似たような台詞の繰り返しとか)が似ている、と感じました。
しかし、読み進めるとそれ以外にも確かに似ています。事実がどうなのか分からないのですが、「影響受けたんだろうな」と思ってしまう箇所が多かったです。


二見遭一は井の頭芸術大学の二回生である。
作品を見て以来心酔している映画学科の画素はこび先輩から自主制作映画の役者として抜擢され、舞い上がって映画サークル『キネマ・マグラ』の扉を叩いた。
しかし、実は二見を抜擢したのはあこがれの天使・画素ではなく、天才新入生・最原最早であった。
彼女が描いた絵コンテはとてつもなく、読み終えた時には56時間も経過していた。そのあまりの出来に、56時間もの間何度も何度も繰り返し、ためつすがめつ読み耽っていたのである。
我に返った二見はすぐに『キネマ・マグラ』へ向かった。そして、初めて顔を合わせたのである。
天才・最原最早と。


素晴らしい映画を作る。それが『キネマ・マグラ』の目的です。
実際、絵コンテのとてつもない出来映えを目にしたスタッフは、神の映画とも言うべき傑作が出来るはずだと期待していました。
そして映画は順調に完成します。ただし、監督・最原最早が隠していた真の目的のために。

ここで天才の定義について、西尾維新作品にて以下のように書かれています。

「……遠い人、ですかね」

  クビキリサイクル P173上段 9行目 より
  (ただし、主人公の意見)


本作に登場する天才は、たしかに常人と異なる思考で動いています。ですが、他者に理解できるよう絵コンテを残したり、取っつきやすいよう冗談を言ってみたり、ちょっと変な人に見られるくらいで違和感はありません。
彼女を「遠い人」、言い換えれば「理解の及ばない何者か」と感じるのは、物語の最後の最後です。

彼女の映画は視覚効果により人の感情や記憶などを書き換えてしまう効果があります。
最原が天才と呼ばれる所以となった映画がそれです。
実際にはそれは映画ではなく、サブリミナル効果とも異なるようですが、知覚心理を応用した洗脳映像です。

そうした効果を用い、死んだ恋人・定本由来を復活させる。
縁も所縁もない他人の脳に、死んだ恋人の考え方や感じ方、趣味嗜好といったものを上書きする。
それこそが最原の目的であり、そのための映画が『アムリタ』でした。

この展開にも驚きましたが、更に驚いたのは二見の行動です。
元々は画素先輩に憧れ、最原を「愛していない」と何度も繰り返していた彼が、彼女の目的を看破しつつも『アムリタ』を完成させ、最原最早の傍にいようと決めたこと。
最終的には最原自身の手により映画の上映が止められ、彼が『アムリタ』を見ることはありませんでした。
そして二人は結ばれ、GOOD END。

さて、この天才を理解できなくなるのはこれからです。
ここで再度西尾維新作品からの引用を一つ。

『真相が看破されることによって仕掛けが成立する企み』があればいいのだ

  ザレゴトディクショナル P110下段 12行目 より
  クビキリサイクルについての項目」


正に大どんでん返し。作者の底意地の悪さにしてやられました。
しかし、読み返せば伏線は確かにありました。バイト先の店長との会話がそれです。

「へぇ……二見君でも、そんな評価することあるんだ」
「え? なんかおかしかったですか?」
「いや、二見君はいつも役者の演技の話ばっかりだからさ。それにこの映画みたいなマイノリティっぽいの好きじゃん。一般受けなんて言うから、ちょっとびっくりしたんだよ」
 なるほど。言われてみて自分でも確かにそう思う。
 最近ちょっと映画の見方が変わってきたように感じる。



解決後、油断したところにもう一回転。
恐るべし天才。そして、恐るべきその行為。理解不能の所行です。


面白かったです。読了後の「やられた」感には堪らないものがあります。
が、再三言いますが、変に先入観を持って読んでしまったことが残念でなりません。純粋に何も考えずに読みたかったです。
確かに西尾維新作品に雰囲気や考え方が似ているようですが、「トリックを解かれることが別の仕掛けになる」みたいなどんでん返しは別に西尾維新先生が初めてと言うわけでもないし、会話のノリだって似てるっちゃー似てる、オリジナルっちゃーオリジナルってなもんだし。

それに、若干粗探しのような見方もしてしまったせいで、以下の項目が気になりました。
・何で最原は井の頭芸大に入ったのか(必然性がない?)
・医科大院生の篠目さんの件(無理がない?)
・処女作の映画に挿入された意味のない2カット(伏線になってない?)
(読みが浅いだけかも知れないので悪しからず)

 映画が始まる。
 僕はきっとこの映画も忘れてしまうのだ。
 そうしたら何回見ても感動できるのかなと、そんなとりとめもないことを考えた。


誰かわたしの先入観も消してください(極力良心的な方法で)。


先入観を持ってしまったせいもあり、わたしとしては2作目の「舞面真面とお面の女」の方が楽しめました。
ただ、どちらも十分に面白く、次作の発売が待ち遠しくてなりません。

次作の題材がどんなものかは分かりません。
でも、一つだけわかる。
その小説はきっと、とても面白いのだ。




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