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「体の内に音楽が鳴り響くんだ」 天にひびき 1~2 やまむらはじめ

2010年07月22日 23:13

天にひびき_1天にひびき_2

子供の頃に見た。同い年の女の子がプロのオーケストラに指揮するところを。
少年時代に聴いた。少女の奏でる奇跡のような音楽を。
それから、それだけを求めてヴァイオリンを弾いている。

カムナガラ」「神様ドォルズ」でお馴染みの漫画家・やまむらはじめ先生の新境地「天にひびき」1~2巻の感想です。

戦争物、ファンタジー作品、超常バトルなどの作品を描いてきたやまむらはじめ先生が選んだ新しい題材は音楽でした。
アワーズで連載が始まった時、当初はこれまでの作風との違いからどうなるものかと静観していましたが、これがまぁ、面白い。
漫画ですから、音というものが聞こえません。効果音程度に擬音を用いることはありますが、背景に楽譜を描かれたって脳内再生できるほど一般人は器用ではありません。
しかし、この作品からはコマから音の波が伝わってくるようです。もちろん音楽自体が聞こえるわけではなく、しかしその音によって衝撃を受けている人々の感動がこちらに伝播してくるのです。

以下、感想です。
音楽一家に生まれた久住秋央は、自身も少年時代からヴァイオリンを習っていた。
幼なじみである迫田美月の父がドイツのオケに呼ばれるということで、その日本最後のコンサートを練習から見学していたのだが、そこで衝撃的な音楽と出会う。
指揮者の曽成維和夫が不在の間に、娘の、それも秋央と同年代の女の子が、プロのオーケストラ相手に指揮をしたのだ。そしてそれは父の指揮を遙かに圧倒していた。オーケストラは彼女の指揮に導かれ、これまでにない素晴らしい音楽を奏でた。

それから9年。秋央は私立の音大に入学し、ヴァイオリンを弾いていた。

曽成維和夫の娘、曽成ひびきは休憩時間に眠ってしまった父に代わり、勝手に代理と称して指揮を振るった。その突然の行動に、しかしオケのメンバーは引きずられるように音を奏で、そして最高の音楽を響かせた。その成果は父・維和夫が指揮を振る時にも現れ、最高のコンサートを行うことが出来た。
しかし、父は気付いていた。自分がミスをしたにもかかわらず、オケは最高の音楽を奏でた事実に。
父は知っていた。娘の指揮者としての才能を。
そして曽成維和夫は指揮者を辞め、娘に跡を託した。

それから9年。ひびきは私立の音大に特別枠で入学、指揮棒を振るう。

そして二人は再会した。


目標が定まらずフラフラしっぱなしの主人公・久住秋央。
何を考えているのかよく判らない主人公・曽成ひびき。
二人のダブル視点で物語は進行します。といっても、ほとんど秋央視点ですが。

子供の頃にひびきの音楽に衝撃を受けてしまい、すっかりあてられてしまった秋央。恩師の榊先生をして「心ここにあらずな演奏」と評されるほどぼんやりとヴァイオリンを弾き続けていました。
彼は天才ではありません。悲しいまでの凡人です。
それが大学でひびきと再会してからは、彼女の音楽に追いつこう、食らいつこうと必死になって練習をします。埋没していた音階教本を引っ張り出し、毎日毎日基礎からの繰り返し。
もちろん凡人なので、突然劇的に上達することはありません。どころか、ひびきの才能に焦りを覚え八つ当たりしてしまうこともあります。
それでも良き教師、良き友人の支えや発破を受け、先行くひびきに引きずられ着実に経験値を積んでいます。

努力する主人公の典型です。
その上野心もあります。
作者からはフラフラしている、と言われていますが、それは過去の話。今は目標に向かって堅実に歩みを進めています。その点で大変に好感の持てる、良い主人公です。

また、音楽面では斯様にストイックな一面を持っていますが、それ以外のこと、特に恋愛面ではニブチンの様子。

今はひびき(の音楽)しか見えていないだけかも知れませんが、同じヴァイオリン科の波多野さんからは確実に興味を持たれています。朝から食事も取らず練習室でヴァイオリンを弾き続ける秋央に匿名で差し入れを入れようとしたり、その練習をずっと見ていたり。ひびきに聞かされた「特別」、如月先生から向けられる「特別」にも興味津津の様子(滅多に表情には出しませんが)。

そして秋央にだけ何故か厳しくなってしまう如月先生も然り。恩師である榊先生の後任ですが、自分でも何故秋央に厳しくあたってしまうのか分かっていません。他の生徒相手とは雑談もかわせるというのに。
あんた、そりゃ気になってんだよ、と教えてやりたいです。色恋沙汰には疎そうだし。もどかしい。

ひびきはひびきで秋央の何に惹かれているのか、彼にだけ伴奏のピアノを付き合います。
同じく波多野さんから伴奏をお願いされた時にはすげなく断りましたが、秋央相手には「人の伴奏を弾くのが楽しくなった」と自主的に伴奏を引き受けてくれます。
それが恋愛かどうかは不明ですが、自分に付いていこうとする秋央の姿勢に感じ入るものがあるのかも知れません。

いやぁ、モテモテですね、秋央。指揮科の梶原(♂)も何故か彼を気にかけているし。これはもう何かの才能ですよ。というか、コンマスを目指す彼はまとめ役として人を惹き付ける才能が十分あるのかも知れませんね。


本作では新ジャンルへの挑戦と言うこともあり、変なトコバカ正直にしてキャラのドラマがモタモタしてしまったとのことですが、2巻巻末で幼なじみの美月も日本へ帰国し、これから大きく動きそうな予感がします。
鬼の居ぬ間にあちこち手を出していたら本妻が帰ってきたような。
これは続巻が楽しみです。




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