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「吉野彼方は言う」セイジャの式日 柴村仁

2010年05月10日 04:10

セイジャの式日

不器用な人たちの不恰好な恋の物語も最終章。遥か彼方へ旅立ちの時。
「セイジャの式日」の感想です。

1作目「プシュケの涙」の感想はこちらから。
2作目「ハイドラの告白」の感想はこちらから。

「プシュケの涙」の続編として2ヶ月連続刊行されたうちの後の方です。先んじて「ハイドラの告白」を読んでいないと分からない部分もあります。
「ハイドラの告白」はアタカ編、
「セイジャの式日」はカナタ編
といった感じ。

今回のタイトルですが、これに関しては神話などは関係なく、読んだイメージで「生きているものがしがらみから卒業する」という印象を受けました。漢字を充てるなら「生者の式日」。

2作目「ハイドラの告白」が1作目「プシュケの涙」と比較して後味の良い仕上がりだったのに対し、こちらは「う、来たぞ!」と思わせるやるせなさと切なさを備えています。
ただし、一冊すべて読みきると少しだけ「良かった」と想います。
ハルさんの「前向きに諦める」姿勢が継がれ、カナタの心残りが払われました。
今回もやはり前後編です。

前編は再びハルさんが頑張る話。
そして三度登場の由良彼方。青の絵画に生きる彼方が「死際の青」を求めてさまよいます。

<スペードのクイーン>を由良家へと返却に行った際、ハルさんは由良彼方へお願いをしていた。
とある彫刻家の先生が腰を痛めたとかで助っ人募集をしていたため、手伝いをお願いしたのだ。
しかし、実際手伝いに行くと先生の態度はなんとも素っ気ない。
違和感を感じたまま手伝い続けるハル達だが、作業場の近くで腐敗した遺体を発見してしまい、作業は中断を余儀無くされる。
発見した遺体は彫刻家の先生のものだった。そして、先生の奥さんと、先生になりすましていた何者かは姿を隠す。
なんとも座りの悪い結末。なので、せめて先生の作品について調べてみようか、と行動し始めたところ、事態は思わぬ方向へ進んでいく。

ハルさんと由良って相性悪いよね!
わかってる癖に、付き合いがいいのか流されやすいのか、ハルさんは懲りずに由良と一緒にいます。
ハルさんの血筋と由良家の血筋は奇妙な運命で結ばれているのかもしれません。

 俺に「遥」という名をつけたのは、布施正道だ。


 なんせ、あいつの名は「彼方」だし。
 俺と由良彼方が二人で並ぶと、まるで大物漫才コンビのようではないか。


それが「ハイドラの告白」と「セイジャの式日」の全て。
血縁と名前の由来を知れば、これだけで感じ入るものがあります。
当人同士が知らないことこそもどかしい。

それにしてもハルさん頑張った。
なのに評価が「空気読まない」とか、泣けてきますね。こういう人こそが無自覚の聖者なのでしょう。
彼との出会いは由良の心を少しだけ癒して、ちょっぴり直しました。
それだけで救われたはず。そう信じたい。


そして後半。
由良彼方、母校へ教育実習に参る。

物語の集大成。結末は切なく、しかし未来があります。

美術部の生徒、日野の視点から書かれる本作は、四年越しの過去との決着。
「決別」ではありません。
「前向きに諦める」の精神です。

「ここで死んだ人間なんかいないんだよ」


この一言で、由良彼方から吉野彼方への想いが汲み取れます。
個人的な感傷ですが、下世話な噂話なんかで泥をつけて欲しくなかったのでしょうね。

 そうだよ。笑って。笑っていて。
 あなたが笑ってるなら、それで、文句ない。


つい、美術部の窓から由良彼方に微笑む吉野彼方を想像してしまいました。

1年経ってハルさんとの関係も継続しているようですし、彼に引っ張られて少しずつ正常さが戻っているように感じました。少女Aの件からアタカも同様であると見て取れます。
遥が彼方の残した傷を埋める。
それを読み取って「良かった」と思うのです。

たぶんこれでこの物語はおしまいです。
未読の方は3冊一気に読むことをおすすめします。
うっかり「プシュケの涙」読了後に間を置いてしまうと登場人物が分からない、各作品との因果が不明などの弊害の他、しばらく後味の悪い切なさに悩まされる恐れがあります。
ご利用は計画的に。




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コメント

  1. ASKA | URL | -

    TBありがとうございました

    はじめまして!
    こちらからもTBさせていただきました。

    >そうだよ。笑って。笑っていて。
    >あなたが笑ってるなら、それで、文句ない。

    私もこの部分で涙腺が決壊しました。切ないけど幸せなシリーズだったなと思います。

  2. Re: TBありがとうございました

    > はじめまして!
    > こちらからもTBさせていただきました。
    >
    はじめまして。
    コメント&TBして頂きありがとうございました。

    > >そうだよ。笑って。笑っていて。
    > >あなたが笑ってるなら、それで、文句ない。
    >
    > 私もこの部分で涙腺が決壊しました。切ないけど幸せなシリーズだったなと思います。
    彼方が高らかに「(教師に)なったるぜー!」と返すところと相まって涙腺にきますね。
    最終的に未来のある結末で本当に良かったです。

  3. そら | URL | -

    はじめまして^^あたしも由良シリーズ3つとも読みました。
    この本はあたしの中では1番おもしろいと思いました。
    3つとも涙がこみあげてきまして;;
    ここで、本題!!「4 Girls 」って言う本知ってますか??
    あたしはまだ読んでないんですけど、柴村仁さんの本で
    あの双子の2人が少しですが、出てくるそうなんです。
    あたし、読もうと思います。

    このブログの主さんは、知っていましたか??

  4. questmys | URL | -

    Re: タイトルなし

    はじめまして^ ^
    コメント頂きありがとうございます。

    > ここで、本題!!「4 Girls 」って言う本知ってますか??
    発売日に買ったのですが、ついつい積み本に・・・。
    折角なのでこれを機に読んでみようと思います。

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