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「俺は、平気なフリなんかしていない」 ハイドラの告白 柴村仁

2010年05月08日 22:26

ハイドラの告白

切ない想いの残り火に魂を焦がす、不器用な恋物語。心に傷を残す物語「プシュケの涙」の続編、「ハイドラの告白」の感想です。

1作目「プシュケの涙」の感想はこちらから。

電撃文庫として発表された著作「プシュケの涙」が、大人も読めるライトノベルのメディアワークス文庫より再版され、この度続刊が刊行されました。
2ヶ月連続で世に出たのは「ハイドラの告白」と「セイジャの式日」。

タイトルのハイドラとは、1作目と同じくギリシャ神話で考えるなら9つ首の化物・ヒュドラ。クトゥルー神話で考えるなら「父なるダゴン、母なるハイドラ」とあり、ダゴン(神)の配偶者となります。
これは何故かモテるダメ男・布施正道と彼の周囲に集まる女性達の異質な愛を表しているのでしょう。
また、舞台となった梅雨時の6月、紫陽花(ハイドランジア)に掛けているものと思われます。

雨降る6月に語られる異形の告白。

――それでも私は、あなたが欲しい。

今回も2話構成です。

前半の話は春川と名乗る青年、通称ハルさんの物語。
知り合いのアーティスト・布施正道がとある雑誌で紹介された。その作品は間違いなく本人のものであるが、インタビューを受ける男の写真はどこをどう見ても知った顔ではない。
本物の布施正道はどこで何をしているのか。
それを調べるため、ハルは衝動的に雑誌にある住所へと向かう。
だが、そこで出会ったのは、明らかに偽物の布施正道と、自分の通う美大での有名人・由良彼方であった。

「プシュケの涙」で壊れてしまった探偵役、由良彼方が再登場。といっても、これといって何かするわけではないですが。
それにしても由良さんは卑劣でございます。

「俺がついた嘘は、たった一つ」


とか言っちゃって。ハルさんの腹立たしさには共感し通しでした。
最終的に和解していますが、わたしは仲良くなれそうにないですね、彼とは。

ただ、「プシュケの涙」と違って読了後に胸糞悪いシコリが残ったりはしません。
むしろ吉野彼方のなんともいえない末路を少しだけ消化できた感じです。
なので、「プシュケの涙」で重いものが残っている読者は一読しておくことをおすすめします。

ただ、新しい登場人物・ねうの存在が消化不良気味。
布施正道に対する鶴見女史と対比させるために、ハルさんの相手として用意されたのでしょうか?

「ハルくんの首がおいしそうだったから」


大人びて見せる幼い少女の、カニバリズム的な行動。ですが、思わせぶりな割にはそこまで物語の核心に絡んできません。ハルさんと同じく、ただそこにいた傍観者の一人でした。

「なんで泣くんだ」
「分かんない」
「怖かったのか」
 ねうはくるくるとかぶりを振った。
「じゃあどうして」
 口を尖らせてしばらくムッと黙りこんでいたねうは、
「ハルくんがいじめられてるみたいだった」
 と一息に言った。


そんな彼女が、ハルさんが多少なりとも救われる要因になったのは確かです。


そして後半は、噂の人気グラビアモデル・Aの一途な恋の話。
「プシュケの涙」と違い、前半の過去を書き物語を補足するものではなく、あくまでAの不器用な恋に焦点を当てた話になっています。ただ、前作や前半の話を読まないとなんのことか分からないセリフがあり、実際分かっていないAの置いてけぼり感が如実に現れています。

口や想像ではなんだかんだ過激なことを言っていますが、割と普通の女の子です。
我が強くて不器用。ですが、ただそれだけ。
恋敵が憎いのなんて普通ですし、ああしてやろう、こうしてやろうと考えても実際の行動に移せてはいません。
むしろ冷徹怜悧な由良兄の本音がチラホラ垣間見える点が重要です。


前・後編の話を通しても、「プシュケの涙」ほどのやるせなさは感じません。
むしろハルさんよく頑張った、と賞賛したい気持ちでいっぱいです。

そして感想は、そんなハルさんが再び頑張る最終章「セイジャの式日」へと続きます。




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コメント

  1. ask | URL | -

    記事リンクありがとうございます。

    柴村先生の「プシュケ」連作は、読み深めるほど泣けてきます・・・。
    ハイドラはセイジャへのこれ以上無い橋渡しだったなぁ、と思います。

  2. Re: タイトルなし

    コメント頂きありがとうございます。

    > 柴村先生の「プシュケ」連作は、読み深めるほど泣けてきます・・・。
    本当に(T□T)
    どうにもならないことを知っているだけに余計切ないです。

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