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「ねえ知ってる? 死んじゃったらダメなんだよ!?」 私という猫 イシデ電

2010年04月12日 01:45

私という猫

もしも私が猫だったらば
とっくに死んでいる。


著者であるイシデ電さんが自身のブログ上で公開していた、「もしも自分が猫であったなら」というIFの世界を描いた漫画「私という猫」の感想です。

I wish i were a bird.
私が鳥ならば良かったのに。

とある英会話教室がコマーシャルで流した言葉です。
変身願望というのでしょうか、自分ではない何かになりたいとき、多くは身近な動物であったり、憧れる何かであったりを想像します。
その中で、猫になりたい、と思ったことのある人は多いと思います。
日がな一日寝てすごし、飼い主の膝の上でごろごろとのどを鳴らしているだけで暖かい寝床と餓えないだけの食事が与えられる夢のような生活。

本書の著者であるイシデ電さんも、そういった空想を思い浮かべます。
ただし、ゆるりとした飼い猫生活ではありません。

ほんの数年か生きて
死んだ
足跡

踏むごとに残す間もなく消えていった
私という猫の足跡


気楽であり厳しくもある猫社会を、「私」という年高の猫の視点で描く本作。
読了後に感嘆の息を吐かずにはおけません。
表紙の黒猫が「私」である。

その容姿は美でもなく醜でもなく。ただ尻尾の美しさが自慢である。
野良猫としてのプライドは無いが気安く撫でられるつもりは無い。
大人気ない性格で意地は悪く、世話が焼ける。
記憶力は良く、他の猫と違い親子関係を覚えている。

そんな「私」の視点と独白で語られる猫の社会。
「命の決まり」を主観で語る物語。

はじめこそ、「私が猫であったならば」という自己紹介のような語りで進む本作だが、読み進めるうちに現実と猫になった「私」の境目は無くなり、胡蝶の夢の如く「私」という猫の目線に移り変わる。
「私」は既に猫であった。そうして猫として生涯を生きる。

猫とは"個"で生きる生物である。
しかし、"個"であるために"群れのルール"という集団性が存在することを知る。
「私」だけを語っていたはずが、「私」の周囲を飛び越えて"猫の社会"を見始める。
そしていつしか「私」の視点は全てを見る何者かになっていた。


その中で語られる"ボス猫"の話について、読者であるわたしは毛穴の逆立つ思いをした。

ある日、先代のボス猫が姿を消した。
心配した「私」達は、現在のボスの仕切りで先代を探し始める。
そうして回顧されるのは、ボス交代劇の一部始終。

片目に傷を負った先代のボスは、巨体をどっしりと構え猫の秩序を守る、ボスらしいボスであった。
ボスの座を狙う序列3位のハナクソ(っていう名前)など歯牙にもかけぬ。
そんな彼が、ある日、大人の「捨てられ」ハイシローと出会う。

ボスはハイシローに猫の社会について教える。
狩りの仕方についても教えた。
ハイシローという名もボスが与えた。
ハイシローにとって、ボスは群れのボスである以上に父親のようでもあった。

「ボスの仕事なんて誰にでもできる
 カスのやる仕事だからな」
「カス?」
「猫のくせにひとりで生きていけねぇんだ
 カスだろ」


ボスから様々なことを「助けてもらった」ハイシローが、取り巻きと縄張りの全てを貰い受け、群れのボスとして立つまでの経緯に圧倒される。序列3位のハナクソでさえも、彼から植えつけられた恐怖というトラウマにより震え上がる。
かといって、ハイシローはとりわけケンカが強いわけではない。
飼い猫として育った彼の細く小さな体躯から、他を威圧する脅威は出せない。
だが、どの猫も彼にはケンカを売らない。ただ不戦勝を重ねていく。
先代のボスですら、初見で彼に恐れを抱いていた。

ハイシローとボスの出会いから別れまでを描いたこのエピソードを是非とも一読して欲しい。


何度繰り返しても足りないくらい、傑作です。
本書を読み返す度に熱いものが込み上げてくるのです。
2008年発行の書籍であるため、たまに古本屋でも見かけます。発行部数が少ないのかあまりお目にかかれませんが、猫好きの人にもそうでない人にも一度手にとって欲しい作品です。

前述の話以外にも、ハナクソとポンタの関係にも惹かれます。親兄弟の関係をあまり覚えていない猫同士ですが、今でこそ「情けない飼われ」とポンタを馬鹿にするハナクソが、赤ん坊の頃は……みたいな。

最初に書きましたが、本作は著者のブログにて公開されていた漫画です。
単行本収録分は公開停止されているようですが、現在作者ホームページの「でんやこのごろ」にて第二部を連載中です。
こちらもかなり衝撃の内容となっています。
第一部を読了済である必要はありませんが、予め読んでおくと深みが増すと思います。




関連記事リンク
・「どぅぶろぐ」さん イシデ電『私という猫』
・「機械」さん 私という猫/イシデ電
・「HK倶楽部」さん 『私という猫』イシデ電著


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