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「たくさんの父と母と孤独なわたし」 ビスケット・フランケンシュタイン 日日日

2009年06月12日 23:21

ビスケット

日日日と書いて「あきら」と読むこの作家の筆の速さときたらどうでしょう。
また出版社をいくつも叉に掛け作品を生み出し続けるこのアグレッシブさ。
そのうちあらゆる出版社の索引に載るんじゃなかろうかと期待してしまう筆者が訪れた次なるフロンティアは、学研より新たに出版され始めたばかりのメガミ文庫。

創刊したばかりのメガミ文庫の知名度を上げるため日日日氏の抜擢は必然であると言えましょう。
彼の人のネームは戦術的に使える販促兵器です。
(真実は知りません。適当言ってます)

その名も素敵「ビスケット・フランケンシュタイン」。
ビスケットは主人公である少女の名前。ちぢめてビスケ。
フランケンシュタインは彼女の性質を表す言葉。

1999年以降、緩やかに始まった病理の進行。その中で、患者の患部を寄せて集めて繋げて生まれた人ならぬ人、人工生物。
少女の姿をしたそれは、市立総合教育センターの一室、『小宮山研究室』にて生まれた。

好奇心を試した花水日景。
接いで繋いだ小宮山楽園。
集め名付けた南雷多。
人道を外れた小宮山風香。
初めての人古月蝶。
そして『病』を宿した世界中の人間達。

その全てが彼女の父であり母である。

「お母さん。お父さん。家族。それは、この身体を構成する少女たちが、幸福と呼んでいた希望の言葉だった。」

日日日氏が贈る、緩やかに狂い崩壊していく世界の物語。

「あぁ生きていて良かったと、継ぎ接ぎの少女は微笑んだ。」

全てはこの一言に集約する。

病で構成されるが故に病に負けず、人に非ざり不老である、少女の50年の物語。
始まりは1999年。
彼女は50年前、彼女が生まれた日のことを思い返す。
彼女の口から語られる、彼女の歴史。
身体を裂かれ、覗かれ、解かれながら、平然とした顔で語る少女。

それは人類の滅びへの道程である。

解剖されながら語る50年間の思い出は3つ。
1.お父さんとお母さんと少女の誕生日
 「初恋あげは蝶」
2.強い愛情という名の虐待
 「ひとごろしはママの味」
3.さよなら現実
 「泥雪姫」

そして最後に語られる衰退した世界。
4.泣いても叫んでも誰も来ねぇぜ へっへっへ
 「あなたの化石を」

最後だけなんか一言説明の雰囲気違いますが、読めば分かります。
何してんだ君は。流石に50年も生きてねぇな。
ちなみに「へっへっへ」って言う方が主人公の少女。

 快楽物質にとろけながら、ビスケは怪物のように哄笑した。
「女性の勝手です。いいから、遺伝子の保存袋でしかない男性は、黙って精子を提供しなさい。あなたが抵抗しても、本能はそれを求めているでしょう?」
「嫌っ、嫌ぁっ、嫌だぁあああ!!」

頑張れ男の子。
全国の生き残った男性諸君に幸あれ。

インパクトが強すぎたので思わず抜粋してしまいましたが、そういうお話ではないです。
至極真面目な病気と命に纏わる話。
その本気っぷりは巻末の参考文献を見れば分かります。


本作は

「救いの無いハッピーエンド」

という、珍しいお話。
なんせ人類の滅亡が決定しています。

「死にたくないなぁ。」

生きてて良かったと思わせては奈落の底へ突き落とし、這い上がってきたらまた落とす。

「ねぇ、お母さんって呼んで。」

特に幸せな家族を夢見た1つ目のお話「初恋あげは蝶」の喪失感は胸に沈みます。

「はい、お母さん」
 倫理も常識も吹っ飛ばした、その言葉には幸福があった。
 古月蝶の、生まれてきた意義があった。

生まれてきてよかった。
生きてて良かった。
人生の幸福を自覚するかしないかはあなたの自由です。
けれどどうせ生まれてきたなら幸せになりたいじゃないですか。

「あぁ生きていて良かったと、継ぎ接ぎの少女は微笑んだ。」

そう思えた少女は幸福です。
生ける屍、フランケンシュタイン。
喪失から始まる幸福への自覚。本作はそうした「幸せ」を自覚するための参考書です。

おっと、死亡フラグっぽいですけど、継ぎ接ぎ少女は死んでないですよ。
なにせハッピーエンドですから。

日日日氏の作品で一番好きなのは今も昔も「ちーちゃんは悠久の向こう」ですが、本作は自分ランキングの中でかなり上位に食い込む良作。
シリアスなのに甘く香る蠱惑的なこの物語。
是非とも一読して頂きたいです。




関連記事リンク
・「こたつ日和」さん 終焉のフランケンシュタイン
・「euforia」さん ひひひ、或いはヒミツの最高傑作の一


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