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「耳なし芳一のママは魔女」MAMA 紅玉いづき

2009年03月16日 23:07

MAMA.jpg

「親から子へ、そして時に子から親へ。
 継がれるものは血の赤さばかりではないのだと、つないだ手のぬくもりが教えてくれるようだった」

幼子が口にする母の呼び名、「MAMA」。
血の繋がらない我が子を慈しむ物語。
人ですらない我が子を抱きしめるための物語。
そして家族として新しく生まれ直す物語。

前回「ミミズクと夜の王」の感想でも描きましたが、登場人物全員が優しい人物で構成された、暖かい物語でした。
読了済みの作品はまだ2作目(+短編1本)なのですが、優しい気持ちになりたくなったら「紅玉いづきさんの作品を読めば良いよ」と薦める事に決めました。そうしよう、それがいい。

本作は「MAMA」に、その後日譚「AND」を加えた2編の物語から成ります。

「MAMA」は大魔術師一族の末席にして落ちこぼれの少女・トトが、逃げ出し迷い込んだ先で人喰いの魔物・アベルダインに己の両耳を奉げ母子の関係を結ぶ話。
「母」を捜し求める魂に捕らわれた人喰いの魔物は、母と呼ぶには幼すぎる少女に守られ、そして「母」を守ろうとする。
一方、落ちこぼれ故に馬鹿にされ続けた少女は、逆に強大すぎる力を手に入れ避けられ始める。孤独な彼女の心の支えは血の繋がらない彼女の息子・アベルダインのみ。けれどそんなものは目を瞑り耳を塞ぎ口を閉じて逃げ続けた結果でしかない。

2人の愛は家族を求めた点で重なり、それ以外を排除した点で歪に歪んだ。

アベルダインは後にトトから「ホーイチ」という名を与えられるのですが、このホーイチがなんとも一途に歪みまくっています。憎まれ口はきいても母には素直。母を守るためなら何十・何百の敵をぶち殺し、母の幸せのために自分すらも殺しかねない愚直さを発揮。
怖いくらいに純心です。
そのせいで周囲からは浮いています。というより、地に足つけた人並みの行為というものが分からないのです。なにせ強大な力を持つ魔物ですから。

本来ならば母であるトトが人の暮らしを教えてやるべきなのでしょう。しかし、出会ったころのトトはまだ幼い少女でした。そして両親から教えられるべき人並みを教わる前に隔離され、それを息子に伝えてやる事が出来ませんでした。
彼女の精一杯は、ホーイチ以外の全てを拒絶する事。愛を伝えるために、「貴方こそが唯一」と言葉で言い、態度で表し続ける事。
本当は彼女の周りには彼女を大切に思う人々も沢山いました。両親だって例に漏れず。ホーイチ自身ですら、彼女が彼以外を求める事を許していました。
けれど彼女は一途に孤独を貫きます。

歪んだ愛が絡みつき、強く締めすぎて破綻しました。

優しいだけではダメなのです。
「ミミズクと夜の王」では想いを向ける相手が異なるために悲劇が起きましたが、本作「MAMA」では閉じてしまった想いのために踏みつけられ壊れてしまいました。
もっと外に目を向けていれば。近視眼的な視点を広げ、他者に救いを求めていれば。

救いの手はすぐ傍に在ったのに。


続く「AND」は後日譚でありながら、オリジナルのアベルダインを母の視点から追うという過去の話でもあります。主役は兄妹として偽りの家族を演じる2人。
こちらは孤独と孤独なもの同士が、己の殻を少しだけ開けて傍らの人の温もりを感じ得る話。

「AND」は孤独から2人へ、「MAMA」は2人から皆へ。
物語が続くとしたら、ネオ・アベルダインには沢山の人に愛される道が続いている事でしょう。初対面の他人を受け入れ、「ありがとう」と感謝の意を述べることが出来る彼になら。





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