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夜は短し歩けよ乙女 4 原作 森見登美彦/漫画 琴音らんまる

2009年01月27日 22:24

夜は短し歩けよ乙女_4

可愛い乙女に恋をした冴えない偏屈の恋物語。「夜は短し歩けよ乙女」漫画版第4集の発売です。

舞台は京都大学、時は文化祭。「私」はいとしき黒髪の乙女を求めて青春闇市たる唾棄すべき文化祭の中を徘徊していた。
京都大学の文化祭は今年も問題だらけである。友人である文化祭事務局長殿・北大路には同情の念を禁じえない。もっとも、なんのかんの良いながら楽しそうで幸いである。彼は学園を騒がせる「韋駄天コタツ」及びゲリラ劇「偏屈王」に振り回されていた。
恋に生き人事に関わる暇の無い「私」にとってそのような些細な万事は何事でもない。目的は乙女だ。
「私」の与り知る所ではないが、黒髪の乙女は持ち前の好奇心を精一杯に発揮して学園祭を満喫していた。
射的の景品である大きな緋鯉のぬいぐるみを背負い、自称天狗である樋口が振舞う「韋駄天コタツ」の豆乳鍋に舌鼓を打ち、パンツ番長と語らい、ざらりとした象のしりを撫でた。
文化祭の重要イベントを悉く網羅していく彼女は、「神様のご都合主義」と呼ばれるほどの強運を働かせ、最重要イベントであるゲリラ劇「偏屈王」に4代目・プリンセスダルマとして抜擢されたのであった。

そして、物語は今巻第4集へと続き、「御都合主義者かく語りき」が幕を開ける。
乙女可愛いよ、乙女。つぶらな瞳に讃える好奇心はキラキラと瞬くようだ。神に愛された乙女のご都合主義は遺憾なく発揮され彼女を楽しませる。
しかし、「御都合主義者かく語りき」は「私」が幕を開け、大団円の内に幕を下ろす、「私」のための物語である。

「私」は乙女を追い求めている。故に乙女の見たものを後追いで拝見する次第である。
しかし乙女は子猫の如き飽くなき好奇心で前へ前へと突き進む。「私」を待つ気など毛頭無い。当然である。彼女は「私」に捜し求められていることなど露とも知る由が無いのだから。
プリンセスダルマと化した乙女は、文化祭を満喫しながらも、劇の際には幼少より「一人リサイタル」にて鍛えた演技力にて華麗に舞うのである。


プリンセスダルマは実在の人物(京大各サークルの部長達)から名を借りた憎き登場人物達を懲らしめ、愛しの偏屈王を追い求める。
その中で詭弁論部部長の芹名に対しては桃色のブリーフを穿かせ衆目に晒す。

詭弁論部の芹名にはやはり桃色ブリーフでしたか。原作読み返したら確かに芹名に桃色ブリーフ穿かせとるわい。
何でこんなに食いついてるかといえば、以前レビューした「【新釈】走れメロス 他四篇」の収録作「走れメロス」にて「詭弁論部に芽野と芹名あり」と自分達で勝手に豪語していた芹名が登場していた事。しかも桃色ブリーフ穿かされてるし。
芹名が親友である芽野、及び図書館警察長官と共に「桃色ブリーフズ」を結成し「美しく青きドナウ」に合わせて優雅に踊ったのは、「象のしり」が展示された文化祭での日没での事。
「私」と乙女が文化祭を訪れたのは最終日であるため、「走れメロス」はその前日が前々日であったのでしょう。いやはや、なんとも耳の早い「偏屈王」の脚本家です。てか、芹名って詭弁論部の部長だったのですね。全然気付きませんでしたよ。部長からして何やっとんじゃ詭弁論部。


閑話休題。

ゲリラ劇「偏屈王」は京大の人間関係を面白おかしく皮肉った風刺劇のように見えるが、実のところその深遠部分は恋愛劇である。プリンセスダルマは愛しき偏屈王を追い求めて東奔西走、脇目も振らずただ真っ直ぐに彼を追い求める。
それはどこか「私」に通ずるところがある。が、それも当然。その脚本家とは一枚のパンツお守りを巡り争った好敵手である。

「ああ… この迷走して暴走するかんじ
 どっかの誰かに似てる…
 …オレ?オレか?
 俺だ!!」

「私」は彼の恋に大いに共感した。唾棄すべき青春の安売りにもこうした運命に興じる男がいるのだ。

男には、去年の文化祭で出会った素敵な女性がいる。一目で恋に落ちた彼女にもう一度出会うため、彼は「偏屈王」のシナリオを紡ぎラストに己の想いを込める。
然しだ。これは彼のための物語ではない。
何度でも言う。これは「私」のための物語である。

今までただひたすらに黒髪の乙女を追い求め、彼女の見聞きした物事を後追いで見聞きし、何かにつけて巻き込まれ、流れに流され、踏まれ蹴られて転がされてきた「私」。
ここに来て、遂に乙女の先に立つ。

副題の名に恥じぬ「御都合主義」の数々。
「私」と乙女が始めて抱き合い、頬を染め、胸の高まりを感じ合う場面においては圧巻と言う他無い。その感無量に満ち足りた心の潤いは「嗚呼、この瞬間のためにこの物語は在ったのだな」とすら思わせてくれる。
満足である。一読者として大いに満足である。

「この人はたいへん良い人だなぁ」

乙女が遂に「私」を意識し、胸の高鳴りに気付いた、記念すべき物語。
どいつもこいつもご都合主義者だ。大団円に喝采を送る。

漫画版「夜は短し歩けよ乙女」も残すところ後1集。次でラストである。
なんだかもう、いてもたってもいられずに原作を読み返してしまうではないか。
そういえば原作の文庫本がつい先月発売されましたね、などとさり気無く宣伝しつつ、次巻に期待。





関連記事リンク
・「( ゚Д゚)⊃旦 気まぐれ」さん ハニカム&歩けよ乙女&WEBマンガ

以下は原作の感想リンク
・「神様はその辺をウロウロしていません」さん 【文学】『夜は短し歩けよ乙女』
・「イノミス」さん 森見登美彦 『夜は短し歩けよ乙女』


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