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それでも町は廻っている 5 石黒正数

2008年12月28日 23:53

それでも町は廻っている_5

女子高生で探偵でメイドな嵐山歩鳥が、その名の通り嵐のように町を闊歩する「それでも町は廻っている」5巻の発売です。
基本はコメディーですが、時にホラー、時にミステリー、時にはファンタジーやSFの要素もあり、もはやなんというジャンルで表現すればいいのか分かりかねます。……やっぱ一廻りしてコメディーでいいか。

おっちょこちょい女子高生で自称探偵で駄メイドな嵐山歩鳥は、昔馴染みの婆さんが経営するメイド喫茶・シーサイドでクラスメイトの辰野トシ子(通称タッツン)と共にバイトをする毎日。
一方で、古道具屋を営む亀井堂静に勧められた事がきっかけで探偵小説好きとなり、女子高生探偵を目指すまでになってしまった現実の見えていない歩鳥。探偵への道は未だミーハーレベルで開かれていない。
なんだかんだで顔は広く、町の皆にも好かれている。特に幼なじみの真田広章からは友達を超えた好意を持たれているが、本人は全く気付かず。真田が好きなタッツンに餌として使われたり、歩鳥自身は数学教師の森秋夏彦に恋していたり(初期だけ?)と幼なじみの域を抜け出る気配が無い。
そんな、複雑でもないけど盛り沢山の日常を描いた物語。

通称"それ町"、なんとあらすじを説明しにくい漫画か。


ここから今巻の感想。

まずは白装束の女性が「たつみやしろう」という男性を探して町を訪れる話、「下町雪訪い小話」。夏に神社で出会った美青年にもう一度会うため再び町を訪れたはいいものの、神社にいたのは年老いた男が1人だけであった。
雪の吹雪くある日の、恩田ユキと名乗る女性が青年を探すそれだけの話。だが、神社で彼女を待ち続けた青年は、30年の時を経て彼女とは見た目に年の離れた、壮年の男性となっていた、という、少し不思議な話。
"それ町"には時折このような非日常が何事もなく紛れ込むので侮れない。

続いては妹のユキコがゴールデンウィーク中の宿題を置き忘れてしまい、夜の学校へ取りに行くという「卒業式」。タイトルからは内容が分からないが、逆に話を読むとタイトルの意味が分かる。久しぶりに訪れた小学校は何もかも懐かしいが思い出よりもはるかに小さく、寂寥感を感じてしまう。

「卒業って何かと思ってたけど 校内が社会全体っていう錯覚から卒業するんだ」

話の最後には中庭にある観察池に恐竜「メッシー」が存在することを匂わせるところがあり、これが伏線となって半年後に雑誌掲載された42話「学校迷宮案内」へと続いている。
また、明言されていないが弟・タケルの教室が3年2組となっており、劇中の1年前の話となっている。

「俺達は機械じゃねえ」は歩鳥が一度は言ってみたい台詞の第一位。クラスでちょっと浮いている紺双葉との、出会ってすぐの頃を思い出す形のちょっといい話。紺は歩鳥のことが好きだということは見ていて分かるが、それは歩鳥の後先考えず能天気なところに救われているためかもしれない。
あ、好きっていうのは、もちろん友達として。

「夢現小説」は夢オチの話である。が、他の夢オチと一線を画するのは、本人が一日寝たり起きたりを繰り返しているせいで今が夢か現か分からなくなっているところ。要するに、ただ混乱してるだけ。擬似ループ作品とでも言おうか、話の冒頭と結末が新聞を腹に乗せて寝る歩鳥、という構図になっているせいで本人が「一日全部夢だったのか?」と疑ってしまう点が可笑しい。不思議がっているのは本人ばかりで、周りから見ればおっちょこちょいがまたおっちょこちょいのことをしていると苦笑したくなるような話に仕上がっている。なんかこういう話って好き。

台風が来てボロ家に住む紺先輩を自宅に退避させようとする「大嵐の夜に」。家族会議で承認されている辺り、紺先輩は家族ぐるみで愛されているのだろうか。これも紺先輩とのちょこっといい話――かと思いきや、実際は家の中で「大嵐(歩鳥のこと)」に遭ったという、苗字に引っ掛けた皮肉な話。

そして最後は前述した36話「卒業式」から続く、「メッシー」の謎に迫る話「学校迷宮案内」。
壁新聞の課題に「メッシー」を題材にした記事を書こうと、タケル主導で調査を進めるが、瓢箪から駒、嘘から出た真。奇しくもタケルの想像が「メッシー」の謎の答えを的中してしまう。「刑事に向いている」と評されるタケルの洞察力が発揮された話。
「メッシー」というUMAを題材としたSF的な話であるが、そんなものは放っといて、内心暴走してる伊勢崎エリ(エビっちゃん)が可愛い。この娘、ほんまにタケルのこと好きやね。でも素直になれない。ツンデレや、ツンデレ。
雑誌掲載時は前後編の2話構成であったが、単行本収録の際に1話としてまとめられている。基本的に1話読切の形で描かれているため、意図して体裁を合わせているものと思われる。その分扉絵が1枚収録から漏れるわけで、ちょっともったいない気がする。はて、雑誌掲載時は後半の扉絵どうなってたっけな。


「学校迷宮案内」のラストがまんまホラー漫画のラストなので、実はこれが最終回と言われてもなんだか勢い納得させられえそうになります。実際は連載続いてますのでご安心を。
今巻も起承転結の起伏にしっかりとしたオチが付いていて良作な話ばかり。面白いのはもちろんのこと、「勉強になります!」と頭を垂れる出来です。物語の伏線や重要事項を要所要所にしれっと含ませている点もまた上手い。まるで「計算して描くストーリー」の教科書のようです。

連載当初は活きの良いギャグ漫画としか思っていなかった本作ですが、連載が続き、巻数が増え、数を読むにつれてするめの様に味が濃く、深くなっていきます。長期連載するほど大きさを増す雪達磨の様。
次はどんなストーリーを読ませてくれるのか、正座待機で胸躍らせつつ、次巻に期待。





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