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鹿男あをによし 万城目学

2008年12月06日 23:59

鹿男あをによし

「あをによし 奈良の都は 咲く花の 薫ふがごとく 今盛りなり」
鹿男とは主人公を指し、あをによしとは舞台である奈良を指す(枕詞)。
一人の男が日本を救う物語、「鹿男あをによし」をご紹介。

わたしは2008年1~3月放送のドラマ版から入った口です。
なので歴史担当の藤原君の立ち位置が随分違うことに驚きました。ドラマでは綾瀬はるかさん演じる天然ボケの勘違いヒロインでしたが、原作では性別男で妻子持ち。設定の違いもあり、物語の奥深くまでは踏み込んで来られません。
あと、ドラマではちょくちょく出てきた学年主任の溝口先生が不在です。大和杯で剣道部の決勝戦にあれほどの声援を送ってくれた溝口先生がいないのはちょっと残念。

原作を読んでみて、またドラマ版の凄さを再認識してしまいました。原作にほぼ忠実な作りに仕上げ、そこにオリジナル要素を絡めてなお名作に仕上げられたのはプロデューサーである土屋健氏の力か知らん。

レビュー対象が原作小説だかドラマだか分からなくなってきましたが、ドラマが面白いのはやはり原作の確かな土台があってこそなのです。
そこで、ここでは原作の面白さを書き記したいと思います。


主人公はストレスで腹を下す情けない男の「おれ」。彼は大学院で助手の研究を台無しにしてしまい、居場所をなくしていた。更に神経衰弱との悪評が広まり、助手が助教授になるための研究の邪魔にならぬよう、教授から「知り合いが経営する奈良の女子高へ言ってみては」と勧められる。
体よく追い出された彼は、赴任先の奈良女学館高等学校でも散々な目に遭う。初日から遅刻してきた魚顔の堀田イトにはからかわれ、黒板に悪口を書かれるという悪戯を受け、仕舞いにはクラスから総スカンろ食らってしまう。
挙句の果てには、春日大社近くの原っぱで雌鹿に声をかけられ、"鹿の運び番"という訳の分からん何者かに選ばれる。
鹿は神宝である「目」を持って来いと言う。しかし、それが人間に「サンカク」と呼ばれていること以外何も分からない。だが、その「サンカク」が無ければ地中のなまずが大暴れし、富士山が噴火して日本中が大変な事になってしまう。
果たして彼は"運び番"の役目を果たす事ができるのか。


ドラマを視聴済なので結末は知っているわけだが、それでも面白いと思えた事が良作である証。
特に10月の神無月に入ってからは"鼠の使い番"が画策した謀略を知った上なので、読み返す心持ちで「なるほど、そういうことか」と納得。堀田の奇怪な行動も背景を知っているので心情が読めるし、大和杯に至っては大阪女学館、京都女学館とのぎりぎりの戦いに手に汗握る。堀田の目的に向かってがむしゃらな様も伝わってくるし、「おれ」が"運び番"の役目も忘れてただ純粋に堀田を応援する様に熱い心を感じる。

特に「おれ」の評価がぐんと高くなるのは原作版の魅力。ドラマ版では藤原君他周囲の人達に引っ張られ、助けられる印象の強い彼。物語の序盤から中盤にかけては周囲に流されるまま訳も分からず奔走するのはどちらも同じだが、大和杯終了後の後半では自らの意思で考え、行動し、"鼠の使い番"を探し出して追い詰めていく。
神経衰弱と罵られていた男が、終盤ではどこか悟った落ち着きさえ感じさせるほど。被害妄想の強くお節介焼きな鼠ですら、彼を「いまどきめずらしく骨のある男」と褒めている。

グッと男の株を上げ、鹿島大名神の治める土地へと帰る「おれ」。研究室に帰ってから教職目指して奮闘する様が目に見えるようだ。


もう一つ、注目したいのが鹿。
元々は地元で有力な雄鹿であった彼だが、転生を繰り返し千八百年生きるうちに「雌鹿の方が餌を貰えて可愛がられる」と悟り、無意識に雌鹿に転生するようになったという。厳かな雰囲気を醸しているにも拘らず雌鹿の顔で声と言葉はおっさん。そして好物はポッキー。喋る途中で便意を催せばどんなにシリアスなシーンでも「あ、少し待ってくれ」と排泄タイムに突入。そこ待つ必要ないだろう。
こんなにユニークなキャラだったのね、鹿。


筆者の処女作「鴨川ホルモー」の鬼という別世界ともまた異なる、「日本を救う」という大義名分の下に踏み入れた神の領域。一人の男の心が知らずの内に育つ成長物語でもありました。
ドラマとどちらがより面白かったかといえばドラマの方なのですが、原作から得られる面白さとドラマ版のそれはやや異なります。基本的なストーリーは同じなのに。また、物語終了後の余韻は断然原作が勝っています。

ところで、ドラマ放送中に漫画版も連載開始していたのですね。コミックバーズにて梶原にきさんによる漫画版の第1巻が発売中です。そちらはわたしも未読なのですが、きっと原作ともドラマ版ともまた違った面白さがあるのでしょう。
漫画版の方も、連載終わったらまとめて読みたいと思います。





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