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太陽の塔 森見登美彦

2008年11月13日 23:34

太陽の塔

森見登美彦氏のデビュー作、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
「太陽の塔」。

太陽の塔と言えばEXPO'70・大阪万博のモニュメント。
と、言っても、わたしは実物を見たことが無いのです。せいぜいが「20世紀少年」で万博万歳万博万歳やってるイメージしかない。
なので、題名の「太陽の塔」が何を指してのものか、始めは分かっていませんでした。表紙の左上に載っているにもかかわらず全く気付かぬ体たらく。

題名が何を指すのか、ようやく分かったのは物語りも中盤に差し迫ってから。
そこから終盤に向けて、太陽の塔というモニュメントが意味を持ち、物語の中に点在し始め、最後を締めくくった。

最後の最後でようやく理解の一端を得ました。
なるほど。太陽の塔か。

現実を生きているかと思えば妄想に耽り、妄想は人の夢まで侵し、再び現実に戻ったかと思えば覚めたか覚めやらぬかも分からぬ世界。
ふと気付けば迷っていた。
話の道筋に迷っていた。読めば読むほどに考えが迷った。
迷ったが、終着地点はハッキリしていた。それだけが始めから明文化されていた。

はて、終着だったか、執着だったか。

「ええじゃないか」

いいのかな?
まあいいか。
「ええじゃないか」と言っておけば。
主人公の「私」は京都大学の某体育会系クラブに所属していた縁で、2つ下の「水尾さん」と出会い、恋仲となった。
もてない全ての男達よ、彼を見よ。彼こそが勝ち組である。大学生活を謳歌するものである。睦言に溺れる愚か者と罵るなかれ。言葉巧みに語ろうと惨めな強がりにしか聞こえぬ。
それに、彼は物語の始まった時点で水尾さんとは切れている。
一人身の男達よ、彼を見るな。
連れ合いの居る男のみ見るといい。彼が未来の君達の姿だ。

「私」は全ての童貞諸君の先を行く者である。
ところが、少々行き過ぎた嫌いがあり、その求道精神により彼女の「研究」を続けていた。彼女の行動を表に起こし、彼女の行動が普段から逸脱せぬよう、干渉しない位置から後を追い、観察を続けた。
しかし、やがて彼女を守るなどと何かを勘違いした正義漢が現れ、「私」の研究を阻害し始める。
正義漢は、名を遠藤という。

「彼らは根本的に間違っている。なぜなら、我々が間違っている事など有り得ないからだ」
とは、「私」が思想的指導者とする飾磨大輝の言葉である。


妄言である。
「私」達はいとも簡単に自己を便宜し、さも優秀であるが故に周囲と逸脱しているかのように語る。
そんな訳は無い。
外れた者、馴染めぬ者は人より一つ「出来ない事」が多い。その点でどう言い訳しようとやはり劣った者である。そして、「私」達は薄々それに気付いている。いや、否定もせぬほど懸命に、意識せぬよう努めている。


「ええじゃないか」

さて、なんと答えよう。
踊る阿呆か。見る阿呆か。ただの阿呆か。阿呆と罵る阿呆か。

主人公の「私」は答えた。

「ええわけがない」

覚めたのか、冷めたのか。それとも知ったか気付いたか。

「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
 そして、まあ、おそらく私も間違っている」

「無知の知」とはソクラテスの言葉。
読者であるわたしが本作から知った事は何であろうか。
考えるほどに分からない。
どこからどこまで現実で、どこからどこまでが夢現なのか判別しない。
物語の最後で「大方、読者が想像されるような結末だった」ことが知らされるのだが、わたしで無い誰かがこの本を読んで同じ感想を持っただろうか。
なんとなーく、こうかなぁ? という考えはある。おそらくそれは正解である。
しかし、読み返すほどにどつぼにはまる。深読みすればいくつかの結末が想像出来るからである。


名作は読者を迷わせるものだと、わたしは勝手に考えている。
煙に巻くようなものではない。己が「こう」と考えた結論に対して、「本当にそうか?」と思考を廻らせるものである。
文章を読むにつれ読者を惹き付けるのは当然として、読み終わったあと、文庫を閉じている間もその文章の虜にしてしまう。
意識が、文字列の迷路に捕らわれるのだ。
その意味で、「太陽の塔」は名作である。


もちろん、感想なんて千差万別。
自分の感想は書いたし、人の感想を読みに行こうっと。

(自分は本作にこういう感想持った、という方はよろしければコメントお願いします)





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・「神様はその辺をウロウロしていません」さん 【文学】『太陽の塔』 打倒クリスマスファシズム、あふれだせ男汁!


コメント

  1. Otoya | URL | SFo5/nok

    僕も読みました

    >名作は読者を迷わせるものだが、煙に巻くようなものではない
    >文庫を閉じている間もその文章の虜にしてしまう。

    目から鱗でした。全くその通りですね。本を読むときのこれからの基準にしようかと思います。

    トラックバックありがとうございました!
    僕もこんな読ませるレビューができるようにがんばりたいと思いました。
    今後ともぜひよろしくお願いします。

  2. questmys | URL | -

    Re: 僕も読みました

    Otoyaさん、コメント&トラックバックありがとうございます。

    > 僕もこんな読ませるレビューができるようにがんばりたいと思いました。
    ありがたいお言葉。
    レビューを書く励みになります。ありがとうございます。

    > 今後ともぜひよろしくお願いします。
    こちらこそよろしくお願いいたします。

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