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四畳半神話大系 森見登美彦

2008年11月03日 20:56

四畳半神話大系

森見登美彦氏をご存知の方いらっしゃるだろうか? 「知っている」という方は挙手を願いたい。
……ウム、なるほど。
では、作品名はどうだろう。現在月刊少年エース増刊エースアサルトにて、琴音らんまるさんの手により漫画化されている「夜は短し歩けよ乙女」。かの山本周五郎賞を受賞し、来年4月には舞台化もされる作品です。
……ほう、そうですか。ふむふむ。

はい、皆さん手を降ろして。
挙手されなかった方は作者ブログを参照されたし。彼の人について多少なりとも触れられると幸いです。日記という形式ですが、文体から森見登美彦氏の作風の一端が覗けます。
興味が出ましたらこちらの作者ブログ「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」をクリック。


今回ご紹介するのは、森見登美彦氏の次男、「四畳半神話大系」。
「夜は短し歩けよ乙女」の登場人物・樋口清太郎と羽貫涼子の両名も登場している。というか、こちらの作品が初出である。漫画版・小説版のどちらを読んだかは問わず、見知った登場人物の出る作品はいくらか取っ付きやすいものだ。

時は現代。
舞台は京都大学。
主役は三回生の「私」。
題中の「四畳半」とは主人公が住む下鴨幽水荘の間取りである。
また、きれいに敷詰められた正方形の形である。
四畳半を四半、それを即ち4分の1と判ずればそれは本作が4つの短編からなる話であることを表す。
更に言えば、当年二十と一つを数える人生の四半を迎えた主人公の事でもある。

先にも述べたが、本作は4つの短編からなる長編作品である。
物語はいずれも同じモノローグより始まり、いずれも同じエピローグで締めくくられる。
主人公には大学進学時にあらかじめ与えられた4つの選択肢があり、その選択により「私」の2年間がどのような経緯を経たかを書いた、いわゆる並行世界モノである。ifもしもの世界である。

ただし、普通選択肢が4つあれば4つの道筋があり4つの結末を迎えるものだが、ことこの世界の「私」に関しては、運命の系統樹というものが一つの幹から4つの枝に分かれ、先で一つに繋がっている。
作中の言葉を借りるなら、本作は4つの可能性を書く物語ではなく、「不可能性」を書いた物語である。

樋口清太郎は「私」の"師匠"という立場から言う。

「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である」

これは出来る、これは出来ない。出来るけどわたしの実力からすればここまで。これはここまで。これもこの辺まで。
そうして各分野様々な方面へ不可能となる閾値の垣根を立てかけ、ようやく「私」は形成される。偏在せず、個としてこの薄っぺらな皮膚の下に限定されるもの、それこそが「私」。

その不可能性を気付かせてくれるために、「私」は以下の4編の道を歩む。

第1話:四畳半恋ノ邪魔者
映画サークル「みそぎ」を選んだ道。

第2話:四畳半自虐的代理代理戦争
奇想天外な弟子募集に応じた道。

第3話:四畳半の甘い生活
ソフトボールサークル「ほんわか」を選んだ道。

第4話:八十日間四畳半一周
謎の秘密機関「福猫飯店」を選んだ道。

そのいずれの道を選んだとしても、「私」が世界に与える影響は小さく、周囲の出来事は起こるべくして起こる。違う事はといえば、その出来事のそばに「私」自身がいるかいないかの差くらいなものである。
それら事件の例は下記。
・映画サークル「みそぎ」での城ヶ崎先輩の失脚
・樋口師匠との一連の関わり(タツノオトシゴ事件など)
・香織さん誘拐事件
・図書館警察での相島先輩の失脚


本作は文体から近代文学の香りが漂うため、時代背景は明治から昭和の間かしらんと創造してしまいそうだが、紛うことなく現代を舞台とした物語である。
また、実時間と過去の回想、未来の結末とを頻繁に切り替えて語るが、そのスパンはいずれも大学進学から三回生の間である。
4編いずれも繋がりが密であるが、平行世界の物語であるため縦の連鎖でなく横の連続性がある(それはぬいぐるみのモチグマが世界を移動することで顕著に見える)。ただし、1話で起こった出来事に対し続く話中でデジャブを感じるなどの描写も見受けられる。


古めかしい文章の中に腹一杯のユーモアを詰め込んだ、なんとも面白い作品です。
森見登美彦作品は今まで「夜は短し歩けよ乙女」しか知らず、それも漫画版の方であったため、実際読んだのはこの「四畳半神話大系」が初めて。

文庫化しているのはこれと処女作「太陽の塔」だけであり、未収録の短編も山ほどある著者ですが、これからどんどん文庫化してくれるものと期待しております。
京大生を主役とした物語が多いと聴きますが、今一番気になるのは狸を主役とした「有頂天家族」。タヌキシリーズ3部作の1作目だそうで。気になるんだけど、近所の書店で見つけられなかった。

これから、おいおい森見登美彦作品を集めてみようと思います。





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